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    • 2009.09.02 Wednesday
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    伝えるということ

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      貴方が好き、と告げられたらどんなに幸せなことか。


      蒼く萌える野原はいつでも少女を見守っていた。
      座る少女も立つ少女も泣く少女も笑う少女も。
      景色は少女のありとあらゆる表情を見ていた。
      その隣にいたのはいつも同じ少年だった。
      精悍さに満ちていて町にあるものや、外の国のもの、学校生活のこと。
      色々なことをころころと表情を変えながら話していた。
      聞いている少女もまるでその場に行ったかのように感動し喜んでいた。

      雨が降った。
      激しく強い雨が地を抉り川を氾濫させた。
      雨がおさまると空は嘘のように晴れ渡り、鳥たちが鳴きはじめ人々も活動を再開した。
      けれど、少女が再び野原に現れることはなかった。
      何日も、何日も。
      少年も。


      少女は家にいた。
      小さな、まま事で使うような可愛らしい家に。
      ベッドが置かれその隣にベッドと同じくらいの丈の小さな丸いテーブルが置かれており、また別に勉強用の大きな机が置かれただけの簡素な部屋。
      ベッドに身を預け開け広げられた窓から野原を見つめる。
      コンコン、と扉を叩く音が。
      少女はテーブルに置かれたベルを鳴らし入室の許可を与えた。
      入って来たのは少年だった。
      心配そうな顔をして、今にも泣きそうなほど情けない表情。
      手には黄色の花弁を持った花が。
      少年が花を差し出すと少女は嬉しそうに花を受け取る。
      にっこりといつものように明るく少女は笑った。

      「どうして、外にいたの」

      そう少年が問うと少女はテーブルに手を伸ばしメモ帳とペンを取り書き始める。
      暫く少女がペンを動かす音だけが室内にこだましていた。
      少女が書き終えメモを少年に渡す。
      メモには丁寧な字でこう書かれていた。

      “貴方に会いたかったの。来るかなって思って。馬鹿だね。来るはずないのに、ちょっと期待しちゃったみたい”

      「ああいう嵐の日は行かないからね。今度からは気を付けなよ」

      こくりと少女は頷いた。
      そしてまたペンを走らせる。

      “心配した?”

      悪戯っぽく少女は笑っている。

      「当たり前じゃないか。誰だって、心配するよ」
      “どうして?”
      「好きだからに決まってるじゃないか」

      その言葉を待っていたらしく少女は満面の笑みを浮かべた。
      それに少し見とれてしまった少年は自分の言動を振り返り顔を赤らめた。


      少女は産まれた時から声が出なかった。
      産声も上げずに母の胎内から出て来たのである。
      皆憐れんだ。両親は嘆いたが、せめて幸せに暮らせるようにと願い愛情を注ぎ少女を育てて来た。
      少女が五つの時。
      少年と出会った。
      声がでない少女を不思議がったが、少したてばそんなことどうでもいいようで話しをし始めた。
      それが楽しくて、楽しくて。
      少女の足は自然と野原へと向くようになり十年。
      相思相愛の仲になった二人はいつも笑っている。
      話しているのは少年だけだけれど、少女もその場に行っているような感覚に包まれて、幸せな気分になれた。

      少女は不安になると何故、と聞いてくる。
      その答えが“好き”に関係があることだと安心したように微笑むのだ。

      「不安なの?」
      “何が?”
      「僕が『好き』って言ったら安心しているように見えるから」
      “うん。そうだよ。私、喋れないでしょう。だからいてもつまらないでしょ。だから、不安なの。どっか行っちゃったらどうしようと思って”

      つづく…!
      勉強してきます


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